外出自粛で変化する、人とのつき合い方
「STAY HOME」の正式要請から、ほぼ1週間。
それ以前も、自主的外出自粛が広がっていたようなので、
自分も含め知人の多くが、かなり長い間、人に会わないでいる状況が続いている。
人とはもちろん“知り合い”のことで、
スーパーで会ったり、ご近所さんのことではない。
たまに食事を共にする友人だったり、
同じ組織の仲間だったり、
もちろん仕事上の付き合いも含めた“知り合い”のことである。
それまで、定期的な会合や集い、仕事での打ち合わせなど、
ごく自然に人と会う機会があり、
自分がどれだけの時間を人と共有しているかなんて考えたことがなかったが、
家族以外とこんなに長い間会わなかったのは、これまでの人生の中ではなかったと思う。
「7割減なんて、言っていないよ。あくまで8割減」とここ数日TVを賑わせている
北海道大学の西浦教授のご希望どおり、自分ではほぼ8割減を実現できている自信を持つ。
車を運転してスーパーや銀行、ときにはドラッグストアに開店早々に飛び込み、
必要なものを買ったら、そそくさと引き上げてくる。
それ以外に出会うのは、ゴミ出しのときのご近所さんと宅配業者のみ。
が、昨日、自分の気持ちの思いがけない変化に気づくことがあった。それは、
ふだんは軽く挨拶をする程度のお隣さんと、思わぬ長話をしてしまったときのことだ。
どちらも庭に水を撒きながらの軽い朝の挨拶から。
「いつ収束するんでしょうね」というお決まりのフレーズが続く。
それに社交辞令を返しているうちに、はたと自分の雑にまとめた髪に気づき、
「怖くて美容院にいけないので、ひどいヘアなんですよ」となったのが長話のはじまりだ。
(よくよく見れば、ひどいのはヘアだけではないのだが)
お隣さんは最近カラーリングするのをやめ、ガンダルフのような長い銀髪を光らせている初老の女性だ。
そして、そこから、はじまった。
カラーしないとラクよ~・・・
最初はとまどいながらも、しかしいつしか話に熱を帯び、気が付けば思いがけない個人情報
(実家のお墓をどうするか、だの、息子がどこに住んでどんな仕事をしているか、だの)
まで、情報交換していたのだった。
ひとしきりのプライバシー公開の後、では、このへんで、とタイミングをみてお互い自宅に引き上げたのだが、
その時、あれ、しまった、という気持ちと、話してすっきりした、という気持ち半々の自分がいた。
思いがけない変化とは、この“すっきりした”部分があったことである。
わりに一人で過ごすことが多いし、その時間が好きなので、
話し相手が欲しい、などと思ったためしがないのだが、
もしかしたら、今の自分はそうなのかな、と。
そう思って、Facebookの友人たちの投稿を見ると、
外出自粛、会合ご法度の中、ZOOMやSKYPEを愛用している人が急増していることに気づく。
中には、20人以上でオンラインの時間を共有している人たちもいる。
同じ組織の仲間であれば、どうしてる?などという他愛ない近況報告会も、
これまた楽しいものかもしれない。
一説には新型コロナウイルスの収束は2025年までかかるらしい。
大幅テレワークに踏み切った企業も多いようだが、
コロナの再来がいつやってくるかわからないときに備えて、
働き方のみならず、人との付き合い方も、
いざというときにはWEBにスイッチできるようにしておくのがこれからの時代の賢明な方法といえそうだ。
コロナ禍で、キャッシュレス化がさらに進んだそうだ。
専門家が情報を発信するのはSNSが多い。
それまで敷居が高かったWEB会議もどうやらここで市民権を得たようだ。
最近では、FacebookやLINEのアカウントを持っていることがつき合いの条件になっている向きもあるが、
そのうちWEBチャットができることもマストになってくるのではないか。
世の中かわれば、つき合い方も変わる。
コロナの中、お隣さんとののどかでリアルな会話を楽しんだことは、憂うべきことなのか。
(文・古川嘉子/“40歳からのキレイとチャレンジ”を掲げるミセスモデル事務所「pearlyterrace」代表。雑誌・書籍編集者)