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光琳と乾山 輝く2つの個性と表現

根津美術館の特別展『光琳と乾山』を観てきました。

2人は、いわずと知れた琳派を代表する芸術家兄弟。

兄・光琳は『紅白梅図』『風神雷神図』や今回の展示作品でもある『燕子花図屏風』などでおなじみの画家の大巨匠。

5つ違いの弟・乾山は、光琳ほど著名ではないものの、江戸期の日本美術史を語るには外せない陶芸家です。

 

2人の作品を一緒に並べて観てみると、その作風の違いがはっきりとわかり、とても面白い展覧会に仕立てられていました。

展示されている『燕子花図屏風』は、奥行きを斬新に無視した見事な平面装飾画。

色も絞っていて、カキツバタをある程度は具象的に描いているものの、細部はかなりデフォルメされた装飾的かつどこか抽象性を感じさせる作品です。

光琳の『紅白梅図』(熱海MOA美術館蔵)や今回の『燕子花図』は、クリムトの『接吻』や『クレオパトラ』に影響を与えているといわれるだけあって、その意匠性には目を見張るばかりです。

思えば、焼き物の絵付けには平面構成のものが多く、純粋絵画というよりは工芸画に近い琳派にはとりやすい技法だったのかもしれません。

 

その陶芸で名を残したのが、弟・乾山です。

乾山の作品は、元祖ヘタウマ、元祖マンガ、元祖カワイイ、という感じの親しみやすいもの。

味があるというのでしょうか。

光琳のように王道をいく作風ではなく、あくまでストリートアーチストという印象です。

でも、遊び心が至る所に感じられ、観る人をほっこりした気持ちにさせてくれる、これも芸術家としての能力といえるのかもしれません。

兄・光琳の人気を受けて描いてみたらしい、という乾山にしては大作の平面構成の掛け軸画が2点ありましたが、これはダサク。

光琳のような洗練された構図や色づかいがないので、ただの田舎画という印象でした。

 

一口に芸術家といっても、得手不得手があるもので、堂々の屏風絵を描く兄・光琳に対して、数々の愛され陶器を生み出した弟・乾山。

いずれにしても、日本が世界に誇る表現方法には違いありません。